江川と西本のライバル魂

2人の関係を象徴するシーンがある。

1979年、「地獄の伊東キャンプ」と呼ばれる秋季特別練習を行なったブルペンで、江川と西本が並んで投げることになった。

西本が述懐する。

「たまたま2人が並んで、ブルペン捕手に向かって投げて。最初は別段変わらない普通の投球練習でした」

しかし100球を超えても両者はやめようとしない。伊東の空に捕手が球を受ける乾いた音が響き続ける。途中から明らかに「普通の練習」ではなくなっていた。西本が隣をチラチラ見る。江川は淡々と投げている。お互い「向こうが終わるまでやめない」と意地を張っていたのだ。

最後はブルペン捕手が立ち上がり、「いい加減にしろ」と怒って強制終了。2人とも300球以上に達していた。

「僕は“力のない者が力をつけるには、誰よりも練習するしかない”と思っていた。だから江川さんが終わらなければ終われない。江川さんも僕を意識していたんでしょうね」(西本)

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