~ゲームセットから一転、偶然から大記録は生まれた。
それは1971年の5月3日のロッテ対東映戦での出来事。
ちなみに、5人連続でホームランを打つことがどの位、貴重かと言うと、4人連続はプロ野球史上わずか6例。それも、86年にヤクルトが大洋戦で、若松、レオン、ブロハード、広沢と続けたのを最後に、27年間も出ていないのだから、いかに貴重な記録であるか・・・。
メジャーリーグでもまだ、一度もお目にかかっていない、大記録なのである。
本当は最後のバッターがショートゴロを打って終わりだった・・・
最後のバッター末永が、平凡なショートゴロ、塁審が手を高々と上げゲームセット・・・のはずだった。
ロッテの江藤慎一一塁手と醍醐猛夫捕手ががっちり握手を交わした。すると、東映の田宮謙次郎監督がベンチから飛び出して、塁審の抗議している。「ボールを落しているじゃないか?」前川塁審は、野手と走者の後ろにいて落球が見えなかったのだ。
そして、この抗議が認められ「セーフ」となり試合続行となった。
しかし、まだ4点の差がありこの後に起こる出来事など誰も予測出来なかった。
ここで代打の今井がテキサス安打を放ち、2人が帰った。
そして、次打者の大下剛史がセンターへヒットを放ち一点差。
2死1.2塁で今度は大橋がショートゴロ、
今度こそ終わりかと思いきや、ショートの広瀬が間に合わない2塁へ送球し
セーフ。
2死満塁となり、しかも、その後の3塁をオーバーランしたランナーを刺そうと思い3塁へ送球したが、送球が左へ大きくそれて6対6の同点となった。
そしてこの試合の最大のドラマが始まった。
延長10回の表、東映は2死満塁のチャンスで打席は代打の作道。前日まで9打数ノーヒットであまり期待出来ない。
しかし、3球目のカーブを叩くと打球は左中間スタンドの最前列に飛び込んだ。作道の10打席目の安打がホームランになりベンチは盛り上がった。
打順は一番に帰って大下だが、2球目を左翼へ第2号ホームラン。
2番大橋は、ここまで5打数で内野安打1本。小技が効く選手だけに、ホームランが期待出来る選手ではない。ところが、粘った末にカウント2―2から左翼席へ本塁打。
本塁打に縁のない選手が3人続けて打ったとあって、3番張本は打席に入る前からブンブン振りまわし、ホームランを狙っていた。
張本は一球目空振りをした後に、左翼席に叩きこんだ。
4本も続くとスタンドも記者席もシーンとしてきた。
次は前年44本のホームランを放ち本塁打王になった大杉が打席に入った。
もう、打って当たり前のムードが漂っている。
大杉はストライク、ボール、ストライク後の4球目を、これまた左翼席に豪快に叩き込んだ。
こうして5連続ホームランという世紀の大記録が誕生した。
ちなみに、この日の観衆は1万1千人。ところが8回の時点で6対1でロッテがリードしていたこともあり、3分の1は帰途に着いていた。この大記録を見逃してしまったのだ。
しかも、5連続ホームランでもっとわりを食ったのは江藤慎一で6,8,10回になんと
3打席連続ホームランを放ったのに誰も注目してくれなかった。
世にも不思議なゲームであった。
参考文献 スポーツ伝説20 ベースボールマガジン社 ホームランを知り尽くす
先日、楽天イーグルスが パリーグ記録に並ぶ4連続2塁打、そして、1イニング7本の2塁打のプロ野球新記録を作りました。
しかし、そのはるか上をいく空前絶後の大記録が、昭和のプロ野球にあった。