小雨の降る後楽園球場だった
1986年6月26日、この日後楽園球場は、小雨の降り野球観戦日和ではありませんでした。しかし、この男、阪神タイガースのランディ・バースにとっては大事な試合でした。
7試合連続ホームランがかかっていたのです。
前年の85年はホームランを54本打ち、王貞治の記録55本に迫っていましたが、王貞治、率いるジャイアンツはバースとの勝負を避け続けました。
バース過去江川を打てなかった。
そして翌年の1986年、奇しくもジャイアンツ戦。 マウンド上にはエース江川卓。過去の4年間、55打数10安打、ホームランはわずかに1本に抑えこんでいました。
相手ジャイアンツの王監督は自分の日本記録が破られるかもしれませんが、江川はバースに対し真っ向勝負に出たのです。そして、4打席までは完璧に封じていました。そして、本人も4打席までは全くお手上げだったと試合後に語っていました。
真っ向勝負に挑む
そして、迎えた第5打席。江川が曰く、「第1打席に抑えた内角高めよりも少し甘く入った。」
フルカウントからの内角高めのストレートを強振すると、ライトスタンドの場外に消えました。
バース本人は、江川のことを本当にファンタスティックな投手だと伝えています。
当時日本には、優れた投手がいました。中日ドラゴンズの小松、大洋ホエールズの遠藤、広島カープの北別府など。
しかし、バースにとって江川卓は特別な存在だったのです。