足を引きずりながらベースを回った。
この年1988年のワールドシリーズはドジャースの下馬評は高くありませんでした。エースのハーシュハイザーは健在でしたが、チームの主軸を担うカーク・ギブソンは幾度となる故障で、ベンチ入りするのがやっとで、素振りも出来ない状態でした。
対するアスレチックスはマクガイア、カンセコを要し、絶対的守護神、デニス・エカーズリーが控えて黄金期を向かえていました。 このシリーズ、どちらのチームが有利かは一目瞭然でした。
第一戦は、9回裏を迎え4対3でアスレチックスリードで、満を持してリリーフにデニス・エカーズリーが出てきました。 簡単に2アウトを取りましたが、マイクデービスが四球を選ぶと、ここでトミー・ラソーダ監督は代打に満身創痍のギブソンを代打に送ったのです。
ギブソンはこの年FAでタイガースから移籍したが、「キャプテン・カーク」と呼ばれチームのけん引き役を務めていました。しかし、脚を故障して、まともに歩くことも出来ない状態でした。
しかし、初球を空振りし、2球目3球目もよろけてファウルし、観客席の誰もが、立っているのがやっとの状態でした。幾度とファウルを打ち、際どいボールを見極めて2―3のフルカウントとなりましたが、誰もがこの起用は失敗だと思いました。 しかし、ギブソンはエカーズリーが決め球にアウトドアの、スライダーを投げるのを知っていたのです。
「その、狙っていたスライダーが来た!」
外角低めの球を強引に、踏み込んで思いっきりフルスイングすると…。 その打球は、大歓声とともにライトスタンドに突き刺さり、劇的な代打逆転サヨナラホームランとなりました。
右手のコブシを高々と上げ、足を引きずりながらベースを回る姿はワールド・シリーズ史上の名シーンとなりました。この感動する光景は日本でも放送されました。
そして、このホームランはシリーズの流れを変え、4勝1敗でドジャースは7年ぶりのワールド・シリーズ制覇となったのです。
このシリーズのギブソンの出場は結局、この試合の1打席が最初と最後となりましたが、後世に語られる、あまりにも劇的なホームランとなりました。
出典 Wikipedia Public domain