1996年の夏の甲子園の決勝戦での奇跡 それは、熊本工業と松山商業の決勝戦での最終回に起こりました。
9回2死からの同点本塁打
熊本工業が2-3の1点ビハインドの9回も2死となり、あとアウト1つで優勝の場面。
ここで唯一の1年生、澤田が松山商業のエース新田の初球のストレートを捉えると、レフトスタンドのポール際へ飛び込む起死回生のホームランとなりました。
飛び跳ねながら塁上を廻る澤田、そしてマウンドに膝まずく投手の新田。
しかし、ドラマはこれから始まるのです。
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直前の守備交代で起こったドラマ
同点で迎えた延長10回裏、熊本工業の攻撃はワンアウト満塁の絶好のサヨナラの場面。
しかも、そのまま優勝が決まる、手に汗握る場面。
この絶体絶命の場面で、松山商業の澤田監督は、守備固めにライトを交代させました。
矢野勝嗣選手は急遽、ウォーミングもろくにせずに、腕をぐるぐる廻してライトに向けてベンチを出ました。イニングの頭からではなく、満塁になってからの交代です。
ライトには、先発した投手新田が入っていましたが、監督には、過酷な練習に耐えてきた矢野への信頼がありました。
代わったところに打球は飛ぶ
サヨナラで優勝が懸かるこの大事な場面。
熊本工業の左打者の本多は、すかさず初球を思いっきり、引っ叩きました。
その打球は、ライトへの大飛球。そして甲子園のスタンド全体から大歓声が上がる。
実況アナウンサーさえも、「いったー、これは文句なし」と伝えました。
打たれた瞬間、松山商業の渡辺投手はホームランだと。打った本多は犠牲フライになると、思いました。
そして走者の星子選手は50メートル5秒9の俊足で、誰もが熊本工業のサヨナラを確信しました。
ただ、1人を除いては…。
その大飛球は、甲子園名物の浜風に打球は押し流され、そのライトの矢野が背走し、一瞬見失うも、前進して掴みました。そして、力任せの懸命のバックホーム。
外野手からのホームへの返球は通常、ワンバウンドで放るのが鉄則。
しかし、サヨナラのケースだけは、監督の教えを守り、矢野はホームへ全力のノーバウンドで投げました。
まさにストライクの返球。キャッチャーが掴んだところに走者が滑り込んで来て、間一髪タッチアウト。ここしかない所にドンピシャの返球が来ました。
その後、勢いに乗った松山商業は、その矢野が先頭で2塁打を放ち、スクイズを絡めて3
得点。11回の裏を守り切り見事優勝を飾りました。
野球の神様はいる
もし、低い送球でワンバウンドだったら、サヨナラ負けだったでしょう。
バックホームへの返球も浜風に乗ることもある。