野球場で野菜を育てる

1962年にメジャー最後の打席でセカンドフライを打ってトリプルプレーを喫したメッツのジョー・ピニャタノは後にブルペンコーチとして復帰し、本拠地シェイ・スタジアムのブルペンで野菜を栽培しました。

とんでもない話のようですが、球場で野菜を育てるのは実はそれほど珍しい事ではありません。ピニャタノはメジャーの球場における「元祖」と言ってよい人物です。

トマトの自生がきっかけ

1964年まで、マイナーでプレーをして1965年からワシントン・セネタースのコーチを務めたピニャタノは、ギル・ホッジズ監督とともに1968年にメッツに復帰しました。

翌、1969年に彼はライト側ブルペンで1本のトマトが自生しているのを見つけ、世話を始めました。

農園がミラクルメッツに貢献

この年、それまで負け犬だったチームは「ミラクルメッツ」と呼ばれる快進撃でワールド・シリーズを制覇。「カボチャや、ズッキーニ、ラデッシュなども植えたピニャタノは、野菜が勝利をもたらしたと考え、1981年にチームを去るまでこの「農園」を続けました。

その後、しばらく途絶えましたが、1998年からクリス・マーフィというグランドキーパーによって復活。彼は、スイカやヒマワリを植えましたが、ヒマワリがフェンスを越え、ビジターグランドからブルペンの様子が見えなくなった為に切ったこともあります。

この2代目農園も、1999年のポストシーズン進出と2000年のリーグ優勝に繋がったと言えなくもありません。

逮捕される事件

「ミラクルメッツ」の翌年のワールドチャンピオンにもよく似たエピソードがあります。

1968年にオリオールズの監督に就任したアール・ウィ―パーは翌年1969年、以前率いたマイナー球団のグランドキーパーだったパット・サンタローンを引き抜きました。1970年に彼が本拠地メモリアル・スタジアムのレフト側フェンスの外側にトマトを植えると、チームはワールドシリーズを制覇。この農園も新球場へ移転に共なってサンタローンが引退する1991年まで続きましたが、1979年にはグランドに降りてトマトの実をもぎ取ったファンが逮捕される事件もありました。

ザ・ガーデンの登場

こうした「ゲリラ」的な形に代わって、近年は球団として野菜を栽培することが増えてきています。代表的なのは、ジャイアンツの本拠地AT&Tパークの「ザ・ガーデン」です。

これは、2014年に右中間フェンスの外にさずけられた約400mのスペースで、トマトやレタス、ケールなどさまざまな野菜やハーブを栽培するとともに、それらを使ったヘルシーな料理を提供するレストランでもあります。全米で最も、健康やエコロジーに関心の高いベイエリアらしい試みで、試合のない日には子供向けの「食育」的なプログラムも行われます。

ロッキーズの本拠地グアーズフィールドもコロラド州立大の協力で球場内に農園をさずけて収穫を観客に提供しています。その他には、レッドソックスも同様の試みを始めており、球場の食べ物と言えば、ホットドックに代表されるジャンクフード一辺倒の時代が終わった事を実感します。

巨大な農業国でもあるアメリカの大都市で生まれた野球というスポーツには潜在的に田園へのあこがれがありようで、選手育成の場を「ファーム」と呼ぶのもその表れと言えます。

しかし、日本では到底、考えなれない事案ですね。

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