「1球投げただけで、勝利した投手」と「1球投げただけで負け投手になる」ケースが同じ試合で記録される。そんな、レアなことが、同時に起こるなんてあり得ない。そんなありえ得ないことが起こりました。 残念ながら、プロ野球の話ではありません。
甲子園での乱打戦
2106年の夏の全国高校野球選手権、甲子園での出来事。
88回大会準々決勝は智辯和歌山対帝京高校との対戦となりました。
この試合、5本のホームランが飛び出す乱打戦となり、8回終了時点で6-4と智辯和歌山がリード。
4点を追う帝京は9回の表、土壇場の2死1,2塁から、なんと5連打で一気に逆転。
さらに、スリーランホームランも飛び出して、この回8点を追加して大逆転となりました。
智辯和歌山は、ようやく投手を竹中孝昇から松本利樹に交代。
その後、代わった松本投手が1球で、打者を打ち取り、長い長い帝京の攻撃が終わりました。
これで「勝負あり」、と誰もが思いました。しかし、野球は下駄を履くまで分かりません。
中堅手が投手
その裏、智辯和歌山の攻撃に移りますが、守りの帝京は9回に表の攻撃でエースの大田阿斗里投手(元横浜DeNA)に代打を出し、投手を使い切っていました。この事が、この試合、さらにドラマを生むことになります。
急遽、センターを守っていた選手が、投手としてマウンドに上がりますが、コントロールが定まらずに四球を連発。4番橋本良平(元阪神)にスリーランホームランを浴びます。これで1点差。続く打者にも四球を与えてしまった為、今度はショートを守っていた、杉谷拳士がリリーフとしてマウンドへ上がりました。
ちなみに、この杉谷は、現、日本ハムの内野手の事です。
遊撃手が投げる
しかし、代わった杉谷が初球を投げると、なんとデットボール。この1球で降板となり、ますますこの試合の行方が分からなくなりました。
この後も、ヒットで満塁、押し出しのフォアボールのあと、タイムリーヒットも飛び出し、ついに8-8の同点。
結局、1死満塁から、次打者が再び四球を選び智辯和歌山が、13-12で、サヨナラ勝ちとなりました。
この試合、滅多にみられない終盤での、大量得点の奪い合うというレアなゲームとなりましたが、更に奇跡的な記録が生まれました。
奇跡的な記録
智辯和歌山の松本投手が1球で、打者を打ちとった為、勝ち投手となり、帝京の杉谷が1球で、デットボールを与えて、サヨナラのランナーを出した為に負け投手となりました。
ここに「1球勝利投手と1球敗戦投手」が同じ試合で同時に記録される事となったのです。